Love Forever

愛しくて切ない婚外恋愛

空虚

最愛の彼が倒れてから

半年が過ぎる


相変わらず私は

毎日泣いている


彼を想わない日はない



もうすぐ彼の誕生日


彼の誕生日の時期は

気候がとてもよく

毎年アウトドアで

お祝いをしてきた


今年はもう、ない

来年も

再来年も


彼の写真に

泣きながら語りかけ、問いかける


私のために歌ってくれた動画で

彼を蘇らせるも

言葉にできない感情が溢れ出て

また、堕ちる


彼からもらった

愛に満ち溢れた言葉たちが

記憶の中で溢れ返り

胸をしめつける




「また明日ね」

と、別れたきり

翌日から逢えなくなってしまった私たちは

もう、

“別れた”のだろうか…

二度と逢えないことが

明確にわかっている私たちは

もう、

“別れてしまった”のだろうか…


誰か教えてほしい




もしも、たったひとつだけ願いが叶うなら


彼を元の身体に戻して欲しい


もしも、それが叶ったとしても

ご家族に知られてしまった以上

私たちは

あの頃の2人には戻れない


ならば


もしも、たったひとつだけ願いが叶うなら


彼が逝くときに

私も一緒に連れていってほしい



月を見上げて

彼の回復を祈り


星を眺めて

彼と一緒に逝かせて欲しいと願う


毎夜、2人で肩を並べて

眺めた夜空は

今宵もなにも変わらない


そしてこれからも

漆黒の闇は続く


明けない夜などない

なんて嘘だ





3ヶ月ほど前のこと


あの日以来

いつもの様に接客業の仕事を

ズタボロな気持ちと面持ちでこなしていたら


「こんにちは」


と、懐かしい声に顔をあげた


そこにいたのは

5年ぶりの

彼とつきあう前に

9年間、一緒にいた8歳年下のマナトだった


彼が倒れてから

10kg近くも痩せてしまった私を見て


「相変わらず綺麗だけど

随分痩せた感じがするし

心なし、元気がないようにみえるけど

大丈夫なの??」


自分の足で立つのに

精一杯だった私は

元彼を前に

ポロポロと涙が溢れた


マナトは一瞬驚いたが

それには触れず

「近くに用事があったんだ」

と言った



マナトと別れてから

今の仕事に就いたので

なぜ私がここにいる事を知っていたのか

その時は、そんな事は思いもつかなかった



その日は

数分言葉を交わしただけで

「またね」

と、別れた



「何年か前にルイの事、偶然見かけたんだ。

でも、俺といた頃よりもずっと綺麗になっていて

声をかけるのを躊躇ってしまったんだ。

でも、あれからずっと気になっていて…

今日なら声をかける勇気みたいなものが出てさ」


その日の夜に

そんなメールが届いた



私たちが別れることになったのは

“お互い離婚をして

子供たちを引き取って

一緒になりたい”、と

告白をされたのがきっかけだった


「あなたはまだ若い。

まだ小さなちぃちゃんには

私ではなく、本当のママが必要だよ。

そして、私はあなたの子供を生んであげることはできない」


あの頃のマナトの奥さんは

ノイローゼ気味で

育児、家事のほとんどを放棄していた


そんな当時、2歳になったばかりの

マナトの娘さん、ちぃちゃんとは

何度も会ったことがあった



1年近く話し合いを続けた結果

私たちは別れた



出会った頃

20代だったマナトは

30代後半になっていた


変わらず整った綺麗な顔で

昔から鍛え上げられた肉体は

服の上からも見て取れるほど

美しかった



「ルイさえよければ

また会いたい。

あの日、ルイを見つけたのは

偶然なんかじゃなく、必然だったんだよ」



その日のうちに返信をしなかったメールの

最後にはそう書いてあった



次の日


「声をかけてくれてありがとう

ちょっと疲れてたから

懐かしさで泣いちゃったよ、ごめんねー」



そうメールをしてから

マナトからは

「ルイ、今日は元気かな?」

と送られてくるようになった


他愛もないやりとりを

毎日しばらく交わした



勇気を出して声をかけてくれたあの日から

数週間が過ぎた頃

「仕事が早く終わりそうだから

ルイのアップの時間に会いに行くよ」

休憩時間にメールが届いていた



9年間も一緒にいたのだから

好きだったはず

そして、嫌いになって

別れたのではない


“ずっと一緒にいようね”


確かにそう誓い合った


そして、9年間の最後の日は

哀しみや寂しさは全くなくて

マナトの幸せを願うばかりだった


それは別れた後も

彼とつきあうようになってからも

彼が私の隣からいなくなった今も

変わらない思いだ


今の私が水瀬さんを想っている

“好き”

あの頃の私がマナトを思っていた

“好き”

とは違う


全然違う


全然違う…


そして、今の

そしてこれからも続くこの空虚感が

元彼で埋まるなんて

思ってもいない



「ご家族を大切にして」


そう、メールを送って最後にした